「働き方改革」の推進が始まっておおよそ2年あまりが経つ。
推進されるその背景には、厚生労働省によると「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」および「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などに対する、生産性向上や就業機会の拡大および意欲・能力を発揮できる環境を作ることにあるという。
そのうえで、多様な働き方の選択または働く者がより良く将来の展望を持てるようにすることを目指していることが働き方改革である、という。
少数精鋭の組織で事業に励まれる会社、事業拡大とともにその組織規模も拡大されていかれる会社、会社そのものも多様性あるのが中小企業でもあるのだと思うが、労務や人事をはじめとした人にまつわる悩みを持たれている会社は少なくないものと感じている。
そのような中で、国が主導する働き方改革という取組みもまた、多くの中小企業にとっては少々厄介なものと受け止められるケースもあるようで、本取組みの背景は重々分かっていたとしても、すぐにそれを良きものとして受け入れることに難しいと感じられる経営者もいるようである。
我々もまた、日々人にまつわる経営者の悩みをお伺いする機会は多く、「ここでしか言えないのですが」というまくら言葉に続けて様々な悩みや愚痴を聞くが、経営者の孤独な状況も合わせて未来会計による支援の必要性を感じてならない。
ここでいう未来会計による支援の必要性とは端的に申し上げると、
・組織としての向かうべき、果たすべきコトは明確であるかを問うこと
であり、逆に、
・組織ではなく個人が個人に向かう事態を改善すること
とも言える。
どういうことかと言うと、組織における共通認識はあるか、つまり、何に対して・どのくらい・いつまでに・なにを・どこで・達成すべきかを明確に互いに共有されているか、を言う。
これらが無い場合、つまり向かうべきゴールやそのための手段が明確でない場合には、人はどこへ向かって・どのように進んで良いのか迷うこととなり、その場その場における人同士の衝突が起きうる可能性が比較的高くなるのではないかと考えている。このような事態が続くことにより、属人的な判断ややり方に頼り切るような状態を生むと同時に「あの人は正しい、あの人は正しくない」というような個人個人を基軸とした関係性で結ばれることになってしまいかねず、詰まるところ、収拾がつかなくなる状態が回りまわって経営者の悩みに繋がる図式が出来上がるものと思われる。
そしてまた、声の大きな者や勤務歴の長い者などが「正しい者」としての領域を獲得することにも繋がり、ゆくゆくは新たな取り組みや現状の業務を改善するような取り組みまたは考え方などが排除されかねない危険性を伴った組織になることも考えられうる。組織として会社としての成果が優先されることよりも、個人同士の関係性における支配意識や優位性が仮に優先されたとしたならば、それこそが組織としての機能を失った状態だと言えるのではないだろうか。
仕事に対して真っすぐな姿勢をもち、新たな取り組みへのチャレンジ精神をもちながら自身の将来や展望に対する可能性も広げていきたいとするような人が仮にいたとしたならば、一体このような組織で働きたい・働き続けたいと思えるだろうか。
組織として、向かうべきゴールを明確に示すことや、その中でどのように果たしていくべきかを明確に示すこと、そして安心して業務に取り組むことができる労働環境を用意することこそが、悩みや愚痴を持たれる先のあるべき組織としての姿ではないかと、我々は考えている。
このような前提をもとに、では働きやすい労働環境とは何であるかについて考えてみたい。
働きやすい労働環境とは何か
「組織としてのゴールや手段が明確であること」によって進むべき行き先や進み方は示されたとしても、その認識度合いはまた受け手側にとってもバラつきが生じる可能性があることにも留意しなければならないと考える。
多くの場合と言って良いか分からぬが、やはり経営者の考えることがストレートに考えたまま・思ったままに伝わるケースは稀で、そこから改めて組織マネジメントを担う者や現場業務を担う者との相互に深いコミュニケーションを取り合っていく必要性が生じる。これを疎かにしてしまうと、共通認識というよりは一方通行的な指示や思いの伝達程度に留まってしまう可能性がすこぶる高く、結果何も伝わっていない・考えた通りに組織が進まない状態に陥るので注意が必要だ。
ということは、単に「ゴールや手段が明確である」だけでは十分性を欠いており、その先としてのコミュニケーションにこそその真価が問われる機会が用意されているように思われる。人への悩みや愚痴を解決するにあたっての必要条件が「ゴールや手段が明確である」ことであるならば、その十分条件は「相互に深いコミュニケーションを取り合っていく」ことという関係性が見えてくる。
深いコミュニケーションとは何か
では相互に深いコミュニケーションとは何であるだろうか。
ここが恐らくは働きやすい労働環境に繋がるものと我々は考えている。ポイントは「相互に・深い」にある。
大きな旗を振る役割を経営者または経営者層が担うものの、その旗の元でいざ現場で実践に移す段階を経ていくごとに、当然ながら想定外のことが起きうる。
そのような際には、
・そもそもこのようなことは想定できる範囲だったのではないか(要、検証と考察)
・想定できなかったとしても、ではこれからどのように軌道修正を図るべきか(要、改善)
などの議論すべき問題が生じることも必然のこととして心得ておくことが必要となる。
これらを放置してしまったり見て見ぬふりをしてしまうと、組織としての学習機会を損ねてしまいかねず、また、現場が担う業務が改善されず同じ悩みや問題が生じ続ける事態を招くことに繋がってしまう。これらがゆくゆくの疲弊へと繋がるのではないだろうかと思うのだ。
全体的なマネジメントと組織を引っ張るリーダーシップとして期待されることは、何よりもこうした事態を適時に察知・認識することにあり、そのうえで適当な判断や改善に繋がるよう連携を取っていく体制を作っていくことにあると考える。
現場担当者が直面する問題に困った際に、すぐに上司に報告・相談・連絡が取れる組織体制であるか、そのような仕組みを構築しているか、相談や質問した際にはしっかりとその内容を受け止められるだけの度量や時間は確保されているのか、担当者を叱責するのではなくあくまでも解決に向けた前向きな討議・意見交換ができるか、これらが重要だと考える。
安心して相談できる、適当なフィードバックを受けることで次への活かし方が分かる、このような労働環境とはまさに「精神的安全性が確保される環境」とも言え、やる気を損なうことなく組織の一員としての役割に集中する姿勢が保たれるのではないかと思うが、いかがだろうか。
ちょっと目線は変わるが、大企業であれば常に経営者として株主や投資家などに対して自社のことを説明する機会に恵まれているものの、中小企業の場合であればそのような機会に乏しく、ゆえに経営者としての説明責任を果たすことに慣れていらっしゃらない方も多いのではないかと思われる。
融資を受ける際または稀に新たな増資をされる際などには、金融機関などへ自社のことを説明する機会はあっても、自社の社員や組織に対してどれだけ自社のことや自身の考えを説明できているか、その内容が浸透した状態になっているかについて、皆様の会社はいかがだろうか。
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