未来会計の実践現場から

未来会計の実践現場から

会計業界における「未来会計」という言葉が世に出て、早数十年が経っているという。

未来会計という言葉からなんとなく受けるイメージや印象、つまり、飽くまでも抽象的な範囲における認知はある程度向上しているだろうが、しかし、その具体的な範囲や内容については、どれほど世の中に正しく認知されているのかは、担う我々が常に自身に問い続けることが必要だと考えている。

言葉の独り歩き、ではなく、世の中の問題や経営者が抱える悩みや課題を捉えた上での充実した内容が伴ってはじめて「未来会計は、経営に必要です」と言い切れるものだと思っているからだ。

毎年「この時期」が訪れることを大変楽しみにしており、今年の「この時期」はこれまでにない大きな楽しみや期待とともに迎えることとなった。

私(筆者)が未来会計支援(通称、MAS監査)を行っているクライアントのA社は、決算を迎える時期と同時にこの10月に毎期の事業計画を策定されている。支援者である私は立ち会わせていただくとともに、この1年間をどのように創るのか、何に対して・どのように・どれだけ組織を進ませるのかを一緒に考え、ときに会計から見えるポイントや会計を使った考え方の整理などの支援や助言を行っている。

ここではまだ広義の未来会計、つまり、未来について考え・会計を活用する、といった抽象的な役割という位置づけ程度であるが、本コラムではさらに掘り下げたところでの未来会計による支援の現場やその特徴についてご案内してみたいと思う。


未来会計の価値

A社は戸建木造住宅の設計・監理・建築を担う、いわゆる建設業を主事業とされている会社である。

A社代表は現在50代前半の、端正な見た目だけでなく類まれな行動力や情報収集力を兼ね備えられた、とってもさわやかかつ知的さを感じられる方である。

毎月の未来会計による月次経営会議においては代表のほか、工事部長と経理総務の方も合わせ、先方からは3名が必ず同席し経営についての共有と課題に対する確認・検討をご一緒に行っている。熱心かつ真摯に経営に向き合われるその姿勢からは、会社や顧客、プロダクトやサービスを大切に想うお気持ちがひしと伝わってくるが、それがまた経営会議そのもののほどよい緊張感を生んでいるように感じる。

図々しい見解かもしれないが、このような時間は私自身が当社社員の一人であるかのような感覚さえ覚えさせてくれる大変エキサイティングな時間でもある。例え困難な状況または事態が生じたにしても、手を組み合って・知恵を出し合って乗り切っていきましょうという熱をご一緒に帯びながらその空間と時間を共有できるからだ。

未来会計による支援は、第一に「企業価値を高め・強い企業体質をつくる」ことにあるが、そのプロセスにおける「経営および経営者に寄り添って一緒に考える」こともまた潜在的な目的または特徴だったりするように思われる。ゆえに、顧客は個性の強い中小企業だからこそ、その会社に合った内容での支援形態(寄り添い方)があって然るべきとも考えられ、支援者である我々は常時、今そしてこれからのこの会社に必要なサービスとは何かを察知しつつ適宜その提案ができるかどうかもまた未来会計が提供する価値の一つでもあると筆者は考えている(まさにコンサルティングの様相を呈している一面か)。


未来会計による事業計画策定、その手順と内容

さて、本題に戻そう。

今年も例年に、そして毎月の経営会議に同じく、A社から3名様のご出席を頂戴したところでの単年度事業計画立案の日を迎えた。

これまでにない大きな楽しみや期待」の答えは、

・決算を迎えた直近期がちょうど一回り経過する12期というタイミングだったこと
・さらなる成長のための具体策がすでに走り始めたタイミングだったこと
・直近での経営環境の変化による影響が出てきているタイミングだったこと

の3点である。

それぞれ、すでに毎月の経営会議にて認識・検討・協議を深めてきた内容でもあり、とはいえ、決して積極的に歓迎すべき要素ばかりではなくその反面には常に消極的なリスクと呼ばれる要素も存在していることから、

ア)すでに起きていることから予測可能な範囲については、緻密かつ厳密に評価し、認識・段取りしておく必要性

イ)不確定要素が多く予測困難な範囲については、より大きな単位で捉え見計らったうえでの弾力性・緩衝性・柔軟性をもって迎え入れられる体制と十分性

について、改めて吟味し、熟考し、数字で計って具体化させる場がこの事業計画である。

弊社における未来会計による事業計画策定は、事前準備以外にこのような場を設け、丸1日かけて専用のシミュレーションソフトを利用し策定を行う。

また、弊社による役割としては、支援担当者である私は主役である社長へのインタビューやヒアリング、または会計視点からの注意点や想定される結果や評価指標などをお伝えする“インストラクター”役を務め社長による意思決定をサポートし、別途、専用のシミュレーションソフトの操作やその場での発言内容や討議・検討事項についてメモを残す“補助者”によるサポートの主に2人体制を敷いている。

インストラクターとして重要なことは事前準備は言わずもがな、当日は何について・どのくらい質問することで社長を引き出すことができるかにあり、一方で、補助者によるサポートとして重要なことはしっかりと記録を残すことにあると考えている。この場で出ることに何一つムダはなく(ゆえに、一日があっという間に過ぎる)、後日より始まる予実管理の重要なベースが言語化され数値化されていく(組織・現場へ落とし込むための見える化とも言えるプロセス)。

この日、やはりあっという間に一日が過ぎ、午前10時に始まった計画策定は気づくと窓の外にはネオンが灯る時間となっていた。

大きく動き出すA社のこれからの一年、この事業計画策定の結果、具体化されたところからしっかりと数字が応えてくれるものとなったことは、当初感じていた楽しみと期待はこれだったのかと気づかされる瞬間でもあった。

まとめとして、社長にはこの1年間に取り組むべき最重要事項についてお言葉をいただく締めにてこの日の計画策定は終了を迎えた。その社長の言葉に、工事部長や経理総務の方が深く頷きながら聞いておられた場面は、この計画そのものがA社にとってのこの1年間に大きく打ち響く前向きさを持ち合わせた、さらなる組織の飛躍に繋がるだろう予感を得たが、ここからはこれからの話、未来会計とともにA社のストーリーは続いていく。


「未来会計」と「管理会計」

未来会計を説明する上で欠かすことの出来ない重要なキーワード、それは「管理会計」でもある。

“利害関係者への説明責任を果たすため”に用いられる「財務会計」は、中小企業の場合であれば税務申告のため(利害関係者としては税務署がこれにあたる)には必須であり、主に会計の中心は「税務上の収益・費用に該当するかどうか(益金と損金)」になりがちではないだろうかと思う。

本コラムでは分量の都合上「管理会計」について言及することは控えたが、紹介したA社における「管理会計」、事業性評価としての運用、そして業績評価としての運用、それぞれについてはまた別途ご紹介を試みたいと考えている。

また、本コラムにて未来会計による支援を「通称、MAS」と表現しているが、

1)Management Advisory Service の各頭文字 …経営管理助言支援
2)Management Accounting System の各頭文字 …管理会計の仕組み

を表わしており、上述してきた内容と合致してくるのではないかと思われるが、いかがだろうか(さらに、MAS監査という言葉で検索かけてみることもお勧めする)。

弊社では、『先見経営の会』というサービス名称にてこのMAS、つまりは未来会計による支援を行っているので、より詳しい内容についてはお問い合わせなど頂ければ幸いである。

未来会計は、企業価値を高め、強い企業体質作りの支援を行っております。お気軽にお問い合わせ下さい。

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