会社を続けていく上での必要条件とは何だろうか?
言わずもがな、やはり第一は売上ではないだろうか。
売上なくして利益はなく、利益なくして自己資本が強化されることはない。
こうした一連の繋がりを以って、基本的には利益が上がればキャッシュは増えるという図式によって、経営環境の変化に対応すべく投資活動や試験研究・開発活動などへの資源配分に十分性が持てる強い会社となるのだろう。
時折ではあるが、目標と戦略とがごっちゃになってしまっている会社をお見掛けすることがある。
どういうことかと言えば、「毎期、売上を安定的に伸ばしていくことを戦略としています」とか、「売上を増やすことでもっと社員に還元できるような戦略をとります」などである。
売上そのものに言及されていることは大変重要なポイントだとは思うものの、経営戦略とは極論してしまえば、
・いかにして売上を増やすか
・いかにして売上による利益を効率よく稼げるようにするか
の2点。
この2点に対する道筋を描き、その道筋のために何に取り組むべきかといった経営課題を認識・評価・選択することというプロセスに思考と情報とを寄せる行為である、と言えるのではないかと思うが、売上云々についてはその上での目標または1つの成果になるものではないかと思っている。
売り上げの重要性
ここで再度、売上の重要性について簡単に整理してみることにしよう。
1.利益をもたらす主要な原因となるものであること
2.ある程度の市場占有度を示すものであること
3.自社そのものを表わすものであること
などが挙げられる。
Ⅰ_利益をもたらす”主要な原因”とは?
1.については上記冒頭の通りであるが、ここで大切なポイントは「主要な原因となる」にある。利益を獲得するプロセスについてであるが主には、
①市場・顧客のニーズとウォンツ(マーケティング)
②市場・顧客による認知と選択(ブランディング)
③購入…入手のしやすさと流通経路(マーケティングおよびマーチャンダイジングの一部)
という一連を経て③購入によって売上が生まれ・売上が利益へと変わる。そしてまた、そこに価値を感じた顧客がリピートで購入したり他の商品やサービスに興味を示したり、または口コミやSNSなどによって拡散されることによって、さらなる売上の広がりやそこからの利益増加が見込まれるような良好な機会や循環が出来上がる。起点となるのは上記①のニーズとウォンツではあっても、そこをキャッチした上で「何を価値として提供するのかという具体的な形」こそがまさに売上ではないだろうか。
もちろん一方では、あまりに原価に近いような販売価格で売上げた場合や、売上げるための犠牲(=コストという名の販売諸費用など)が大きな場合などでは、利益そのものが削がれるどころかマイナスになることさえもあり得り、ゆえに、売上を構成する値決めについてや、製造・販売計画を立てることには大変大きな意義があることを強調しておかなければならない(戦略の重要性へとブレークダウン)。
Ⅱ_自社の市場占有度を把握せよ
次に2.であるが、自社がどのようなドメイン(事業領域)で、どれだけの規模を占めているかを知ることとは、今後の仕掛け方や出方、そしてプロダクト・ライフサイクルを知る上でも大変重要ではないかと思われる。
ここで言うプロダクト・ライフサイクルとは、人と同じくプロダクト(製品・商品・サービス)にも寿命がある、という考え方だ。一時期は大きな成長段階にあっても、やがて成熟し衰退する、つまりは利益が得にくくなっていく過程を示す。
売上は自社による自助・努力によって生み出される側面と、市場の追い風・向かい風を受ける・受けないによっても変動する側面があることも知っておかなければならない。特に向かい風が強い場合、競合が多く・市場が飽和しているような状態であれば、「やればやっただけ儲かる」ことはなく、「やってもやっても中々儲かりにくい」ことが想定できるのであって、ゆえに切り替えた発想や行動が求められることになる。
売上を求めるうえでこのような背景があることを常に意識しておくことは、中長期的な会社成長の度合いに関係することだろうと思う。今は順調であっても、環境変化が激しいこの時代においてはずっと順調なままであるかどうかは常に疑っておいた方が良いのであって、その上での切り替えた発想や行動とは何か、これこそが経営計画および戦略に紐づく思考の起点になるのではないだろうかと思う。
Ⅲ_売上とは、つまり
最後に3.である。
すでに1.の中でも軽く触れてしまっているが、売上とは自社そのものなのではないかと思うのだ。
世の中に与える価値とは中々見えにくいものなのかもしれない。生活の中にある不便を解決または代替することで価値を提供していたり、美味しいものを食べたい・飲みたいとする欲求を満たすことによる価値の提供であったり、または時間的制約や専門的知識の不足による制約を代わって引き受けその制約を代替することで価値を提供していたりする。
いずれにしろ、具体的なその提供方法や手段が売上たるプロダクトやサービスにあるのであって、そしてそれらを提供する会社そのものを表わしているとも言えそうである。
だからこそ、自社が何を売上としているのか、その売上によって何を価値として提供しているのかを知ることとはつまり、世の中における自社の見え方や覚えられ方に通じるのだと思う。
売上と戦略的思考
以上、売上の重要性について簡単に触れてみた。
自社の存続やこれからの成長について考えたとき、まずは売上そのものをどのようにしていきたいかから考えてみることによって、上記のような多くの考えるべきことが湧き出るきっかけになるだろうと思っている。
単に、順調に増やしていきたいとか増やした結果云々するとかの段階で止めるのではなく、ではそうするためにはどうすべきなのか、必要なこととはなにか、そもそも売上とは何であるかについて、より深掘りしたところへと思考をブレークダウンすること。これはつまり、戦略的な考え方の起点へと通じる思考ルートではないかと思うのだ。
逆に、会社を続くけていく上での十分条件は何かと問われたならば、キャッシュだとお答えしたい。
これについてはまた別途触れてみたいが、今回はここで終えたいと思う。
戦略を売り上げに結び付けるためには?
最後に、経営戦略を立てることとは売上や利益について考えることであるものの、最も顧客に近い現場がその戦略に則ったうえで具体的に何を成すべきかを知ることが出来るかどうかは、戦略そのものの良好さとも言えるだろうと思う。立派な戦略を立てても、では何をすべきかが分からないようでは、恐らく絵に描いた餅になるだろうと思うからだ。
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